仕事について(その15)

今度は築50年で一棟借りされているビルに異動して欲しいとのこと。

一万平米あり、現在設備員が3名で所長と、副所長が高齢なので、将来を踏まえて一人増やしたいとの事だった。

またまた、上司とともに身の回りの物を持ち現場に向かう。

うーん。古い。某企業の本店だが、本店移転計画が何度も流れてしまい、早いうちに退去売却をするつもりだったが、それが出来ず、まともな大規模改修もされずにずるずる古くなってしまったとのこと。

「うわぁ」という感じ。

まあ事務所でしかないので、仕事が多少忙しいかもしれないが、何とかなるだろうと考えた。

早速、スタッフと対面する。

所長も副所長ともに定年を過ぎており雇用延長期間とのこと。

所長は工場の工務出身で百戦錬磨だった。何でもできる、無ければ自分で作るというタイプの人。ちょっと見せてもらったが、なるほど、機械室には旋盤など機械類がいろいろあるわけだ。

副所長は別業種から来た人のようだが、大変温和な人。

で、問題なのが、というより必ず問題な人がいるのがビルメン。

M氏としよう。このM氏、年齢は50くらい。

仕事を全くしない。電話も出ない。

球交換も器具がちょっと大きめだったり、特殊なものだとびくびくおどおどした感じで作業が極めて遅い。

所長と副所長が高齢なので、仕事は当然私に降りかかってくることになる。

とはいえ、所長は良く仕事を教えてくれるし、何かあれば必ずフォローしてくれる。

一名は戦力外で3人で作業をすることになった。

本当に古いビルで満足な改修もされていないから、忙しい。

今どきPCBの安定器がまだ残っているビルって何よ?初めて見た。

入居、所有しているこの企業、今でいうプライム上場企業だぜw

さすがに現在、別の場所に新ビルを建てており、移転予定だそうだ。一応移転先のビルの管理も受注できるはずとのこと。

トイレの便器も和式がまだ残っている。洋式の便器も今のものと比べて明らかに小さい。「TOTO」ではなく「TOYOTOKI」と筆記体のロゴの便器。

配管類は漏水多発。養生シートで仮養生する。

詰まりも多い。

汚水槽に入って布団叩きもやる。要するに攪拌だ。

地下受水槽の内張がタイルだが、くしゃみをしたらタイルが崩壊しそう。大丈夫か?

空調も中途半端な改修をしており、コンセント類を含め、設置階と別のフロアから電源を無理やり引っ張っている個所が多数。

冷房は空冷になっていたが、暖房は何とボイラーだ。温水ボイラーだ。

換気ファンは後付けのインバーターの具合が悪く夏は扇風機を当ててしのいでいるという。

井内のケーブルの被覆が明らかに経年でおかしい。大丈夫か。

今でいう軽量天井の作りとはまた違い始めて見た。

所長から資料を頂いたとはいえ、よくわからない。室外機もつけるところがないのか意味不明なところについている。

空調修理自体は業者対応なので問題なし。

オーナーのレイアウト変更の手伝いは多かった。什器移動とコンセント増設、モール処理位だが。

エレベーターはよく、カゴが沈下する。閉じ込めもあった。

エレベーター機械室の盤のブレーカーやマグネットが大きいこと。こんなの初めて見た。メーカーサービスいわく、もう部品がなく、都度接点を磨いているとのこと。

万事こんな感じで移転までの後数年持てばよいという感じだった。

大昔のビルなので、地下の管理用スペースも大きい。

仮眠室は当然のこと、台所や浴室もある。機械室も作業用スペースが十分ある。

警備はアルソックが入っているので無関係。別に仲が悪いということもない。

3か月は我慢していたが、仕事をしないM氏には頭が来ていた。

3か月したので所長にそれとなくM氏の事を話した。

すると所長は、彼の履歴書のコピーを見せた。

設備員の履歴書のコピーが保管され、それなりに各自が見ることが出来たりするのがビルメンクオリティ。

履歴書を見ると、

「あっ、お察し」

という経歴だった。当社の面接は本社の役員だけで勝手に決めているようで、現場責任者が参加しないことが多い。だからイレギュラーな人が良く入ってくる。

ゆえに私も入社できたのだろうから悪くは言えないが、履歴書を見るとこれを入社させるかという感じだった。

完全にジョブホッパーで、どうにか辻褄をつけようとしたのだろうが、ごまかしきれないところは空白期間となっているように見える。

ビルメンだけで4社目ですべて2年以内で退社している。

一応、大学卒で新卒は名前を言えばすぐにわかる特殊法人に入社していた。一番最初に入ったところにしがみついておけばよかったのにと思う。

なかなか急勾配の転落っぷりだな。

私が一番最初に入社した企業も今では上場企業だし、新卒は運みたいなところがあるよね。

所長も、会社にこいつは使えない旨の話をしていたそうだが、どうにもならないので放置しているとの事だった。

そんな感じで2年が過ぎたが、青天の霹靂が起きる。

移転先の新ビルの管理を受注できなかったとのこと。

「うわぁ、アカン」

当社は小さな管理会社で常駐管理物件が少ないのだ。次に行く現場はないだろうなと思った。

また転職活動かと思うと気が重い。

ネットでいくつか漁ってみたが、いつも求人を見る回転寿司状態の企業ばかりだった。