仕事について(その16)

ビルメンの正社員なんていうものは「なんちゃって正社員」であって、現場が解約になった場合、次に行く現場が用意出来れば、引き続き勤務できるものの、そうでなければ辞めることになる。

当社は小さな管理会社なので、次に行くことが出来る現場はどう見ても用意できそうになかった。

とはいえ、転職すれば、以前、在籍した、人材が高速回転する、定着率の悪い激務現場の求人くらいしかないだろうし、それが嫌なら、営業兼務の巡回物件か、これも人材が高速回転する、マンション管理の求人くらいしかない。

過去に何度か、世間体の悪いビルメンからの脱却を試みたことがある。

中高年ということもあり、異業種転職はほぼ不可能だったとだけ記しておく。

で、陰で転職活動をしながら不安な日々を過ごしていると、次の現場の話があった。

四千平米のオフィスビルで現在勤務するビルの所有者の関連企業がオーナーのビルということだった。一人現場である。

どうにか首が繋がってホッとした。

所長と副所長は最終日まで勤務をしてそのまま退職。M氏も一緒に退職してもらうことになった。

とりあえず、仕事をしないM氏に対して「ざまあみろ」という結末になった。

で、またまたまた、上司に連れられ、身の回りの物を持ち新しい現場に向かう。

今度のビルの管理室はとても狭い。これまで勤務したビルで最も狭いのではないかという感じ。退職予定の設備員から引き継ぐ。

退職の理由は奥様の病気とのこと。兄弟とともに連携できれば良いのだが、いろいろ事情があってそれも難しいとのこと。気の毒な話。

小さな事務所ビルなので一通り教えてもらえばどうにかなる感じだ。

点検票などの書類に目を通すが、大昔の点検票をそのまま使っている。問題なのは設備更新が行われているにもかかわらず、点検票に全く反映されていない。

どう見ても適当にマルしてやり過ごしてきたのだろう。

流石にこれは直さないとまずい感じだ。現設備員が退社したら少しずつ直すことにする。

しかし、これまでのビルメン人生を振り返ってみて、一人現場の多いこと。

運がよかったと思う。変な激務現場に当たったのは、前職の会社の最後の物件だけだった。

設備面では問題のないビルだが、各テナントとも、業種柄、入退室に厳しく、フィルター清掃はテナント員が在室していないと作業が出来ない。

そのため、フィルター清掃の日が複数に分かれてしまう。

平日の早朝だったり、夕方だったりする。ビルの面積でいえば土曜日に出社して一日あれば簡単に終わる量なのだが。

また、ビルオーナーが最上階に事務所を構えている。

要するに親会社の天下りが、ビルオーナーの会社にたくさんいるような会社だ。

天下りの受け皿としてなんちゃってビル会社があるという感じ。

そこのおじさんが暇なので遊びに来る。おじさんの相手が大変だった。

上手に相槌を打つのも大変だ。