仕事について(その9)

移動した常駐現場は明らかに「当たり現場」だった。

とはいえ、トラブルもあった。

まだ、水冷空調のビルだったので、配管のピンホールで一フロア水浸しになることもあった。

さすがにこの時は会社に連絡して、応援を頼み、夜遅くまで排水処理など行った。

このビルに3年ほど在籍したが、また異動だという。

今度は一人現場とのこと。現設備員の異動によるものだった。

再び、身の回りの物を持ち、上司に連れられて、現場に向かう。

五千平米のオフィスビルだが、ビルオーナーが上層階に住んでいるのが特徴。更に受付兼務だ。

地下でのんびりというわけにはいかず、テナント員が玄関ホールを通るたびに見られてしまう。ちょっと嫌な感じだったが、仕方がない。

異動予定の設備員は50代半ばの人だった。おとなしい感じの人。

設備面で変わったところもなく、引継ぎ自体は問題なく終了だが、オーナーとの間に不動産会社の人間が入っており、その人は細かいとの事だった。

翌日、その不動産会社の担当者が来館した。見た目怖そう。

不動産だからな。

引継ぎは二週間だったのだが、異動予定の社員がバックレたという。

何があったか不明だが、そういうことなので引継ぎ満了前に一名で勤務することになった。

五千平米の純粋なオフィスビルで運転業務などもないのでただ管理室にいて受付をするだけ、蛍光灯の交換とたまにパッキンやピストンの交換だけ、あとは保守業者の鍵貸出だけなので問題はない。

ただ、勤務時間が他の現場より一時間長いのが玉に瑕。毎日残業が一時間付くので多少実入りがよくなった。

オーナーの属性は天上人に近い感じらしい。

こっちからすれば何も関係ない話だが、付き合いが広く貰い物が大変多く、お中元、お歳暮の時期は管理室がこの手のもので溢れるくらいだった。オーナー宅に台車に積み上げて運び込んだ。

そこから流れてきたものと思しきものが管理室によく届けられたことが記憶に残っている。

トラブルもなく4年ほど過ぎたのだが、また異動とのこと。

二連続で当たり現場だったのに、ついに外れ現場に行くことになる。