仕事について(その11)

机はあてがわれたが、パソコンはなかった。

事務処理用のパソコンを見ると、何か一案件が起きるたびに、パソコンに入力する。

入力箇所がやたら多く、動作が遅く閉口する。

当時はまだ蛍光灯だったので、球交換が頻繁に発生し、球交換専門のパートの人がいたくらい。

早速パートの人から「これで何人目かな」と言われてしまった。

本当に出入りの激しい現場だという。

朝の巡回に行く。二人で行くのだが、これが大変。点検票が20ページもあり、2時間かかる。なんじゃこりゃ。

何か所も残留塩素やphを測る。

地下の機械室も何カ所もある。ポンプも何十台もある。配電盤も延々続く。

相方の先輩が、ちょっと休もうという。話をする。

この相方の先輩も今月で退社するそうだ。小太りの感じの人だ。

「いろいろ、めちゃくちゃだよ」

そうつぶやく。もともとは配管工だったそうだ。

縦系統の移動も時間がかかる。業務用エレベーターの台数は少なく、皆が乗るから各駅停車になるから屋上まで時間がかかる。

朝の巡回だけで一苦労。屋上も広い。盤も分散している。

試しに携帯の万歩計を入館時にセットして、夕方の退館時にチェックすると一万五千歩を記録していた。

トイレの数も多く、便器だけではなくオートソープの詰まりもとても多い。

館内が広く、大した作業でなくとも移動だけで時間がかかる。球交換をして防災センターに戻ってくるだけで20分はかかる。

電話はひっきりなしにかかってくる。

空調の温度調整は別に構わないのだが、省エネとの兼ね合いでわざわざ、クレームをつけたところに出向いて、温度を測定し、それを契約先担当者に伝え、それから温度調整をこちらで行うという。アホかと。

テナントから電話でクレームを受けて、その場のコンソールでササっと温度変更するならともかく、こんなことをしている。

何かと独自ルールみたいなのが多い。

契約先への報告会があるので、ちょっと一緒に見て欲しいということで同行したが、パワーポイントで資料を作って、プレゼンしている。

おいおい、うちらはビルメンだぞ。ただの作業員だって。なんでそんなことしないといけないのか。

それで契約先の質問というか突っ込みが嫌らしいこと。

営業職じゃないんだから。これじゃ、人が高速回転するわけだ。

こりゃだめだ。宿直勤務に入る前に辞めるしかない。